かねてから噂の新ばし笹田へ。このお店は京味で修行した方がご主人。ネット上でも評判の店で非常に気になっていた店だ。何でも同じ新橋の鮨しみづの親方が推薦する店なんだとか。人気を予想して1月前に予約を入れる。当日は予約をした8時にきっかり入店。店内にはすでに4人の客がおり、7席のカウンターはほぼうまってしまった。
まずは丹波産のだだ茶豆。塩水ではなく、しっかりとしただしで煮ているため香りも非常によく味わい深い。
もち米と鱧の照り焼き。鱧は上手に下ごしらえがしてあり、もち米とよくあう。
水菜との油揚げの煮物。シンプルだがふっくらと炊き上がっていて、技術を感じさせる一品。うっすらとした出汁の風味が食感を崩すことなく感じられた。
御造りは4種。マグロ、平目、鯛ともう一つ。たしか皮目をあぶったものだったが、塩で食す。これが非常のうまい。そのほかの刺身もレベルが高く満足のいくものであった。
椀物として松茸と甘鯛。言うまでも無く旬の松茸の香りが良い。しっかりとしたサイズのものを椀に入れてくれる。天然の丹波ものではないとは思うが、この金額のコースと考えるとそれでも余りある嬉しさである。
焼き物として笹ガレイとその縁側。自家製の一夜干しとのこと。燻製のような香りもしつつ酒飲みにはたまらないだろう。縁側部分はパリっと香ばしく油が乗ってよかった。
つまみ?としてか非常にうまいイカの塩辛が出る。市販されているものとは大きく異なる素材のよさを感じさせる塩辛である。
焼きなすも秋を感じさせ、非常にうまい。焼き方がうまいのか、出汁がうまいのか。いや、おそらく両方であろう。本当にここの店の出しはうまい。
さらに煮物。冬瓜。こちらの出汁は他の煮物の出しとは少し違ってだいぶ薄めのもの。その分冬瓜の苦味・旨みが感じられて非常によい。
箸休め的な意味なのか、いちじくが出た。これが非常に美味。あますぎず、渋すぎず。秋の味覚の一つなのだろうか。
噂の釜で炊いた白米と赤だしに漬物。言うまでも無く美味。一人で訪れたにも関わらず釜で一人分を炊いてくれる。お変わりも可能で2杯目にはおこげもついている。赤だしの具はなめこ。赤だしのうまさをしみじみ感じる。
最後は自家製のぜんざい。ほどよい甘味と心がやすらぐような爽やかさを持ち合わせた一品であった。
こちらの店の印象は、サプライズ的な要素はないが、しみじみと本当の味を教えてくれる、といったもの。和食とはそもそも素材の持ち味を十二分に生かすことが大切であるということを痛感させられた。創作和食や高級食材ばかりに目が行く人には感動は味わえないかもしれない。なぜなら、その人たちには単なる焼き魚や御造りでしかない品々が出てくるのだから。しかし、カウンター越しに見える、主人の丁寧な切りつけ・工夫・所作を見ると、一つの皿にどれだけの思いが打ちこめられているのかを知ることができる。非常に感慨深い思いをさせてくれる店であった。
帰り際は店の外まで見送ってくれて、振り返るとまだ主人がこちらに頭を下げていた。サービスも一流である。さすが京味出身といったところか。季節の変わるごとに訪れたい店である。